心の安定

私たちは様々な環境や人間関係の中で生活しているので誰にでも悩みもあれば、問題が生じたり、しんどい事も思うようにいかないこともたくさんあります。

まさに「心が乱れる」・・

そんな状況はたくさんあるものですし、

長い人生の中ではいろんな出来事が重なったり、一気に問題が押し寄せてくる事もあります。


私も数年前に突然父の病気が分かり闘病、亡くなるまで色濃い怒涛の時間を過ごした経験があります。

当時はレッスンをするだけで精一杯、

動く元気も気力も出ない、

自分の時間などない・・

そんな状況ではあったけれど、わずかなヨガの時間に救われていました。


静かな時間の中で身体を動かしていると『呼吸をしている』ことに安堵し、

ガチガチになった感情や思考が少しずつ緩やかに解けていくのを全身で感じ、

心の落ち着きを取り戻すきっかけになれる時間でした。

今振り返ると、身体も気持ちも立て直さなければ人前に立ってレッスンすることも、

父や家族と向き合う事も難しかったように思います。



▶️ヨガの最終的な目的は「心の安定」

ヨガの哲学書【ヨーガ・スートラ】にある一説

 yogas citta-vritti-nirodhah  ヨーガ・チッタ・ヴリッティ・ニローダ (サンスクリット語)

 ーヨーガとは、心の働きを止滅することである ー


「心の働きを止滅する」というと難しいように聞こえますが、

「心の波を穏やかにする」と捉えると、

しっくりと受け止められる気がします。


日常生活の中で私たちの心は常に動き続け、

さらに大きな出来事、予期せぬ出来事を経験すると感情や思考も大きく揺れ動き、

時にはそれらに振り回されてしまい、

自分自身が疲弊するだけでなく、

周りとの調和も崩れてしまう事にもなりかねないものです。



ヨガの時間は

頭を使わず考えずに身体を動かしてポーズを行い、

呼吸を調整し、

身体の内側にも働きかけることを行います。

それは淡々と自分に向き合う時間であり、整える時間です。


集中して身体を使っているうちに神経や思考のスピードが緩やかになり、

また同時に身体を動かすことで体力がつき、自然と身体の底から元気が出てきます。

そして体力がついた身体が安定しバランスを保てるようになると、

少しずつ心や感情も落ち着き、強くも柔軟にもなっていきます。


身体が安定してくれば、やがて心も安定してくる。

これは理屈ではなく、不思議だけども自然にそうなっていきます。

そう、

身体と心はひとつ。


やがて自分自身を客観視できる俯瞰した目線を持てるようになったり、

抱えている悩みや問題に向き合う力が備わってきたり、

気持ちを少し軽く持てたり、

考え方や捉え方が変わったり、

工夫だって増えてきたりします。


「身体の体力がついてくる」=「心の体力もついてくる」

ということ。



「前向きになろう」と無理に自分を鼓舞するのではなく、

自然にそうなっていく。


ヨガにはこういう「力」もあるところが、

私はとても好きなのです。